旅に出た理由
2023年3月、3年ぶりに海外への旅を計画した。仕事を始めて1年がたち、仕事に慣れてはきたものの、言いようのない閉塞感を感じており、最近は人生に挑戦する姿勢が失われてきていると感じている。今の職場から外に出たいという気持ちと、今の安定した恵まれた環境(実際慣れが全てなのかもしれない)が拮抗した結果、挑戦を敢えてしなくてもよいのではという外的圧力も併せて外に出ることをためらっている状況にあった。
旅はいつも自分に行動力を与えてくれる。日常から強制的に離脱することによって自分をフラットな立ち位置に置き、動きやすくなる。海外は特に、自分の全てを捨てられる場所だ。近年はコロナウイルスの影響で日本を出国することができなかった。日本とはどんな国なのか、世界のフラットとはどんなことなのかを忘れてしまい、世界が周辺だけで完結しかけていた。それを破壊するため、海外に行くことにした。上司には秘密にしておいた。
仕事終わりで出国、そして野宿
3月15日、16連勤明けで札幌市の菊水駅から地下鉄に乗った。新札幌で乗り換えて新千歳空港に向かった。半ば私の中では完成された動線で、この動きを100回以上してきたと思う。20:55発のpeachに搭乗して成田空港に向かった。
成田空港ではホテルが取れず、初日から野宿になった。成田空港は24時間営業で空港泊がしやすい。第3ターミナルの到着ロビーがベンチに手すりがないタイプで、最近寝袋で寝るのに慣れてきたこともあり、ここで一夜を明かした(家のベッドは先日捨てた)。一緒にその場所にいたのは自分よりも少し若い人たちだった。社会人でも海外に行けるぞと思った。
出国と自由の感覚
朝起きて、VietJetにチェックインした。カウンターチェックインでは威勢のよい女性が手続きにあたっていた。21C、通路側だった。出国は並んでいた。出国の列で前にいた女性は男性と電話をしていた。遠距離恋愛なのかもしれない。出国は顔認証で完了し、スタンプは不要となっていた。圧倒的な進化が見られた。出国が完了すると、思い出した。日本ではないこの感覚。心が軽くなる感じがした。自由。
VietJetの機体はA330だった。ホーチミン行きの便。噂によるとAirasiaから移籍してきたようで、手すりは全て壊れていた。2日間(仕事と野宿)の疲れがたまり、機内ではほとんど寝ていた。静かなフライトだった。村上春樹の「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」を読んだ。絶望的なシーンでも戦い続ける主人公の姿に共感した。