出発
札幌は昨日から積雪が見られた。朝7時に起床し、適当に服を圧縮袋に投入。パソコンと充電器類、あとは外が寒いのでユニクロのウルトラライトダウンとフリースをリュックに入れ家を出た。
私の家は札幌の地下鉄沿いにある。札幌から新千歳空港まではJRかバスがあるが、普段は地下鉄駅から直行できるバスの方が便利なのでそちらを使っている。が、バス停に行くと運転手さんから、雪が原因で事故で渋滞しているとのこと。やむを得ず札幌駅まで向かい、JRで新千歳空港に向かうことにした。たまたま特別快速エアポートが停車しており、席を確保することができた。JR北海道の大橋俊夫氏の案内を聞きながら空港へ向かう。先頭車だったため、モーター音は聞こえずただ静寂の車内だった。
空港に着いた。札幌では雪が強く降っていたが、千歳市はそうでもないようだった。ユナイテッド航空のマイルのチェックインをANAカウンターで終わらせ、カードラウンジに行った。ラウンジではトマトジュースが好みであり、1杯頂いた。
搭乗券を見直してみると、なんかいつもと違う。
新しくなったのかもしれない。今回の搭乗券は、行先のフォントが明朝体でとても上品に見えて好きだ。
外にはJALのA350が止まっている。このブログの導入部分を書きながら1時間の時を消費した。
時間になり、保安検査を通った。修学旅行の高校生がたくさんいた。
新千歳-羽田
新千歳から羽田まではBoeing 777-300に搭乗した。この機材は大型機にも関わらず国内線仕様のため500人程度が乗ることができる。ほぼ満席でのフライトだった。内装はクラシックで、現代のものとは異なる渋い青色の分厚いシートが好みだ。ひじ掛けや壁がやや劣化し茶色っぽく色づいてきているのも風情がある。
普段はLCCしか乗らないから感覚のずれは否定できないが、この路線はとても客層が良いと感じる。ビジネスパーソンが多く、そうでない人もなんとなく上品で、自然に譲り合いと声かけ合いを行っていたのがとても印象的だった。機体はスピーディーに出発し、大型機であるからか安定した飛行で羽田に到着した。普段は機内では音楽を聞くか寝ていることが多いが、今日は機内の雰囲気に流され読書をした。みんな本を読んでいた。
フライトは時間通りに羽田空港へ到着した。
羽田-大館能代
乗り継ぎ時間は35分しかなかったが、前便が定刻に到着したおかげで余裕をもって羽田空港に到着することができた。羽田空港第2ターミナルは動く歩道で移動する。ゲートまで500mほどの道のりを歩いた。
途中、全く気付かなかったのだが、ぼうっと歩いていたからか左手で軽く持っていた搭乗券を落としてしまったようだ。動く歩道に乗った瞬間、後ろから声を掛けられ少し驚いて振り向くと、スーツを着た男性がいて、「チケット、落としましたよ」と搭乗券を渡してくれた。本当に感謝した。羽田までの機内でも思ったが、東京だからなのか、客層が良いからか分からないが助け合いの精神がある。
大館能代行きの機材は本来A320neoが充当されるはずだったが、エンジンの不調でBoeing737-800へ変更となっている。2-3割しか客のいない落ち着いた機内から外を見ると、エンジンを外されたA320が空港に駐機しているのが見えた。メンテナンスに入るのだろう。
機体は軽快に飛行していたが、機長からのアナウンスでは到着先の空港が吹雪のためゴーアラウンドの可能性があり、着陸できた場合も最大の自動ブレーキで停止するとのことだった。離陸から40分、機体が着陸態勢に入り雲を抜けると、山脈が見え、またすぐに雲に入った。
ここまでの揺れは大きなものではなかったが、滑走路が見えていざ着陸する瞬間、かなりの衝撃とともに前Gが掛かった。これが最大ブレーキか…と思った。無事に着陸できてよかった。
降りる直前に機長からのアナウンスがあり、思ったよりも雪が浅くて結果的にハードランディングとなったようだ。
大館駅と散策
大館空港は羽田までの便が1日に3便飛んでいるだけの小さな空港だ。東北は東京とのつながりが強い。
外は寒い。風が強い。大館駅までは乗合バスがあり、乗車。バスは通常の乗合タイプだが、全席クロスシートだった。支払いには電子マネーやクレジットカードが使えて便利。1時間程度で大館駅に着いた。
外に出ると、空が広い!ちょうど夕方の秋田の空は、北海道にも東京にもない独特の風情がある。
このために来たんだと思いながら、街を歩く。駅は先日新しくリニューアルされたようで、JR東日本のマークがきれいに付いていた。
定食屋さんに行こうとしたが閉まっていたのでスーパーに向かう。私は旅先でスーパーに行くのが好きだ。土地の雰囲気も分かるし、地元の方言も聞けるし、食事も買えるし、大体スーパーで買うお惣菜とかが一番旨い。大館市で個人的に目を付けていた北鹿酒造の日本酒を2本購入した。あと、東北の旨いビールの花鳥風月。朝から何も食べていなかったので、おにぎりを購入。米どころなので、期待。会計を済ませ、日本酒についてはサービスカウンターから送ることにした。お姉さんに声を掛けると、箱に入れますか?と聞いてくれたのでお願いして、ヤマト運輸の伝票に記載した。送料を払おうとすると、なんと「贈答品扱いになるので送料は要りません」とのこと。900円の日本酒なのにいいんですか…。秋田の底力を垣間見た瞬間だった。
スーパーの向かいに旨そうな弁当屋があった。今日の夜は旅館で酒を飲みながら夕食をとることに決めていたのでヒレカツ弁当と唐揚げ5個を注文。しかし、ヒレカツ弁当はもう終わってしまい、ロースカツに変更になるとのことだった。そのままお願いして、待ち時間に今日の最初の食事であるおにぎりを食した。旨し。10分ほどで弁当が完成し、頂いてバスに乗った。
バスは普通にSuicaが使え、事業者独自の交通ICもSuicaとコラボしたものだった。私の地元ではSuicaは使えず現金のみなので、この規模の街でこれは便利だと思った。また、北海道などではICカードを独自に導入しているもののSuicaは使えないパターンが多い。やはり東北ではJR東日本があるからなのか、私鉄やバスでもSuicaとの互換性が街の規模に対して大きいと感じて便利だと思う。峠の中にあるバス停で降りると、目の前が旅館だった。
宿
宿に入ると、暖かい空気が身を包んだ。チェックインをして部屋に入ると、年季は入っているのだが清掃が行き届いており心地よい。すでにストーブも付いている。
天然温泉の宿なので、まずは大浴場に向かう。日帰り入浴もやっていて、寧ろ地元の人の方が多い。身体を洗い、浴槽に浸かる。熱い。この熱さが東北かぁ…。肩まではつかることができずに半身浴にした。5分ほど温まったところでミストサウナへ向かった。蒸気を浴びながら、脳内から全ての思考を取り除いていく。心を無にしていく。水シャワーを浴びて露天風呂に出る。
露天風呂は広く、左手にクラシックな檜風呂、右手に野趣溢れる岩風呂があり、檜風呂の上には木製の屋根、風呂の目の前には橙色の電灯が設置されている。冷えた外気を感じながら空を見ると、雲と山と月と星が見える。美しさに目を奪われ、風呂から出ることが出来なかった。今まで悩んでいたことが脳内から洗い流されていった。自然はあくまでも冷静で、その冷静さが私の中の疲れと思考の偏りに基づく負の感情などを全てニュートラルにしていくような感覚だった。
部屋に戻り、食事をとる。よく見ると、唐揚げが6個に増量されている。無言でサービスしていただいたことに感謝した。思い返せば、今日は人に対して暖かい気持ちにさせてもらうことが沢山あった。花鳥風月を飲みながら、弁当を食べる。
やっぱ米は旨いですね。唐揚げ6個は若者とはいえ多かったが、全部ちゃんと食べた。キャパシティを超えた摂取エネルギーは自然と眠気を誘発し、布団に潜り、この文章を書いている。そろそろ寝ようかと思う。最後にもう一度夜の空を見てから。